高校受験生の息子の夏期講習の請求書を見て、絶句した。なんとそこには20万円とあるではないか。なぜこのような額になったのだろう。この塾は、本当に面倒見がいい。授業がない日に息子を呼び出し、英語を個人的に無料で指導してくださったりと決して儲け主義の塾ではないはずだし、うちが母子家庭であることも知っているのに。

 でもスケジュールを見ると、朝から晩まで塾に行っている。普段は夕方の3時間ほどなのだから、時間が大幅に延びたぶん、料金も大増額するのだろう。理屈ではわかる。わかるけれど、何か削れるところはないか目は必死にプランの穴を探す。しかしすでに得意な「数学」は1コマもない。それなりに塾も気を使ってくれていて、必要なオプションしか組み込まれていない。しかもそれは歴史だったり古文だったり息子が人並み以下の点数のものばかりである。

「おまえ、どれか削ってくれないか」

 と息子に声をかけると、彼はぷんぷん怒り出した。

「先生達もすごく張り切って準備してくれてる授業を受けないわけにはいかないよ! ママは僕が高校に受からなくてもいいの!?」

 周囲のお母さんに聞くと夏期講習は、他の塾でもそのくらいするらしい。夏は受験の天王山とよく言われるだけに、塾にとってはかきいれ時なのだろう。

 しかし今春から国公立高校は無償化されている。私の息子が目指しているのはその国公立高なのだ。無料の学校に行くために20万の塾代を投じないとならないのだろうか。こんなにお金がかかるのなら、生活がギリギリの家庭はどうしたらいいのだろう?

 困った私はとある制度を見つけた。なんと東京都では生活が困窮している家庭に塾費用を支援してくれるという。しかも合格したら返金しなくていいのだとか! 残念ながら私は条件に当てはまらなかったけれど友人の母子家庭に大急ぎで教えてあげた。

 塾代を支援してくれる全国初の試み「チャレンジ支援貸付事業」、知らない人が多く、初年度は想定の3割の利用者しかいなかったという。しかしここが貸してくれるのは僅か20万円。つまりひと夏で吹っ飛んでしまう金額だというのが、またせつない現実である。