私は時々カメラを構える。大抵の場合、美男子の姿を記録したいからであって、先月も、とある男子高校生を撮らせてもらった。
撮影の誘いがめちゃくちゃオヤジっぽくて自分でも笑ってしまった。
「卒業する前にさあ、記念に制服姿を撮影しておこうよ。綺麗に撮ってあげるからさあ?・・・・」
彼は少し怖かったのだろう、友人を連れて撮影現場にやってきた。マニアな私は、教室そっくりのスタジオをレンタルする念の入れようで、大張り切り。前日に買っておいた卒業証書を入れる筒や、上履きなどを見せると彼もびっくりしていた。何しろまたとない卒業間際の現役男子高校生の撮影なので私のテンションはかなり高かった。
男の子を撮るのは、とても楽しい。ちょっと角度や表情を変えるだけで、夢いっぱいにも、憂いいっぱいにもなる。首や肩や腕の線も、まだできあがっていない繊細さがあって、見るだけでときめく。そんな私のドキドキをシャッターに込めながら、
「ハイ、ケータイを耳に当てて!」
「目の前に友達がいると思って、手を振ってみて!」
などの注文に、彼は目を白黒させながらもつきあってくれた。
スタジオ撮影と、外での撮影も合わせると、なんと合計5時間。800枚もの画像を撮ってしまって、私も大満足だった。
実はこの男の子は、私が常連のギャルソンカフェの店員さん。お店にはiPhoneアプリにさせてもらいたいからということで借り出したのだけど、あんまり写真が素敵なので、お礼に彼にプレゼントしようと、小冊子を作った。最近はネット経由でCD程度の値段で32ページのフルカラー写真集を自分で編集して作れてしまうのだ。
できあがった写真集があまりに本当の写真集のように画質が良く、彼も可愛く撮れているので店長さんが驚き、なんとこのたび、お店で3000円で販売してくれることになった。ちなみに私は利益放棄している。撮らせてもらっただけで大満足だったから。
趣味で撮った写真が、思わぬ感じで拡がっていって私もうれしい。でももしかするとこんな風に「好きで好きで作っていたら周囲に伝わった」ということこそが正しいのかもしれないなあとも感じている。