仲良しの20歳の男の子が誕生日で、プレゼントにジーンズが欲しいというので、某ショップに連れていった。彼に一番似合うと思われるデニムは11800円もした。最近のジーンズって結構高い。私がはいてるのなんてスーパーの衣料品コーナーの赤札の1500円のものなのに。

 こんなに高いジーンズを買ってあげたのには理由がある。先日彼は、私の愚痴に1時間以上もつきあってくれたのだ。普通の男の子なら適当に理由をつけて逃げ出すであろうこの場面で、彼は黙ってうんうんと最後まで話を聞いてくれた。こういう優しい男の子に、私はめっぽう弱いのだ。

 たった1度グチをきいてくれただけでもうれしいのに、彼は私のことを「放っておけない」といって「またいつでも呼び出していいよ」とまで言ってくれた。彼も母子家庭で育ったために、苦労しているシングルマザーを見ると見逃すことができないのだという。

 私と親しくなる男の子は半分くらいが母親の離婚を経験している。だからなのか離婚経験者である私を慕ってくる。そして私を母親のように思っているのか甘えたりからかったりしてじゃれてくるのだ。この彼も私のことを、今日も何度も冗談半分で「ママ」と呼んできた。まあ、母子みたいに年も離れているし、ママでも別にいいけれど。

 若い男子と一緒に歩いている時にはできれば恋人だと思われたいのに、いよいよそうもいかない年齢になったようで、この間、とある博物館に若い男子連れで入ろうとした際には受け付けの人に「保護者のかたですか」と聞かれてしまった。かなり哀しかった。

 この日だってつらい思いをした。ジーンズショップの店員さんは、彼のことを妙に気に入り、
「モデルさんですか? それともタレントさんですか?」
 などともてはやした。彼は照れながら、
「どれでもないです。ただの一般人ですよ」
 などと言いながらも、顔をほころばせていた。

 彼はいい。イケメンだし、店員さんにもちやほやされて、さぞかし気分が良かったことだろう。
 しかし店員さんは、彼のそばにいる私に向かって、
「マネージャーさんですか?」
 と聞いてきたのだ。
「ちっ、違いますっ!」
 即、否定したのだけれど、彼にニヤニヤ笑われてしまった。ああ、誰か、私たちに、
「恋人ですか?」
 と聞いてあげてください(違いますけど)。