東郷:ロシアの弱点は半導体です。最新の技術を持っていないため、どこからか入手しなければならないわけですが、廣瀬先生のおっしゃったイランと、もう一つ、中国もポイントでしょう。現在、中国がロシアに半導体を提供しているとの報道がありますね。中国にとっては、戦略論としては、この戦争が長期化することで米国とNATO(北大西洋条約機構)の関心がヨーロッパとウクライナに釘付けになるほど、東アジアで自分たちの地場を固めるのに好都合な話はない。「敵の敵は味方」です。中国の敵である米国の力を弱くするなら、ロシアを陰で支えることは国際戦略として当然でしょう。武器の供与はやりすぎでも半導体を巧妙な形で提供するくらいはやるのではないか。中国製の半導体の性能はそれほどよくはないらしいけれど、ロシアにとっては助けになるでしょう。
廣瀬:その事実が公になれば、中国は制裁されるのですか?
東郷:うーん。相手は中国ですからね。制裁をかければ、激怒するでしょう。米国としては、当面の敵ロシアと、これからの最強の敵、中国と全面対決することになる。それは避けたいシナリオでしょう。中国が目立たない程度に動いてほしいと思っているのでは?
廣瀬:トルコが裏切って軍事部品をロシアに輸出しているという情報もあります。米国製品までもがトルコから輸出されているようで、米国がいらついています。トルコは昨年3月29日、ロシアとウクライナの和平会談を仲介していますが、おそらく「いいところ取り」するつもりでしょう。トルコは常に目の前の状況を国益に還元しようとしていますね。
東郷:あの和平会談では、あと一歩で停戦できるかもしれないという案をウクライナが提示しています。その場を提供したトルコは、非常に特異な立ち位置にいます。NATOの一員ですが、明らかに価値観が違う。トルコはこの戦争を早く終わらせたほうが利益になると判断すれば、あの場をもう一度提供することはあると思います。
廣瀬:トルコは現在も稀有な交渉仲介が可能な国であることは間違いないです。昨年の和平会談後も双方から意見を聞くことは続けているようです。
東郷:仲介国としてもう一つ可能性があるとすれば、インドではないでしょうか。両国と話ができると思います。
(構成/編集部・古田真梨子)
※AERA 2023年3月13日号より抜粋