感染経路はウイルスを持つリスやネズミにかまれたり、血液や体液、発疹に触れたりすることで人に感染する。また、感染した人の体液や発疹、患者が使った寝具や衣類などからも感染する可能性がある。近距離で飛まつを浴びることも感染リスクがあるとされる。新型コロナウイルスとは異なり、空気感染は確認されておらず、新型コロナほどの感染拡大はないと見られている。

 ただ、気になる研究結果も出ている。2022年にサル痘の患者15人のウイルスの遺伝子配列のデータを解析したところ、18年と19年の関連するウイルスと比較して、およそ50カ所の変異が見られたという。従来の想定よりもおよそ6~12倍の速さで変異しているという。

 ウイルスの変異が感染拡大につながっている懸念もあるが、西條担当部長はこう指摘する。

「感染を繰り返すことで変異して感染力が強まることはあるかもしれないが、私はその可能性は低いのではないかと見ている」

 その理由としてあげるのが、主な感染経路が限定されている点だ。

 イギリス政府が公表しているデータによると、感染者2014人のうち2001人(99.4%)が男性だ(上グラフ)。さらに576人に行われた調査(一部回答で母数が小さくなっている)では、549人(96.5%)が「ゲイ、またはバイセクシュアル、同性とセックスをした男性」、313人(55.6%)が「直近1年で性感染症にかかったことがある」、176人(31.1%)が「過去3カ月で10人以上の性的パートナーがいた」と回答している(下の表)。

 当然、女性の感染者も出てはいるところではあるが、WHOも男性同士との性交渉、特に複数の性的パートナーを持っている人々に感染が集中しているとし、「適切なグループに正しい戦略を持つことで止めることができる感染拡大だ」(テドロス事務局長)と指摘している。

 西條担当部長はこう語る。

「感染力の高いウイルスに変異しているかどうかは今後詳細な研究がなされないとわからない。今回の感染はMSM(男性間性交渉者)やセックスパートナーが多いなど、人の生活様式にかかわるところで増えている。今の流行ではサル痘は確かに性的指向に関係しているが、基本的には性別にかかわらず誰もが感染するリスクがある。サル痘について正しく理解して、冷静に対応していく必要がある」

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