平昌五輪、滑走順抽選の席上で宇野昌磨(左)が上着を着るのを手伝う羽生結弦

 そんな宇野に対し羽生は「やっと多分昌磨が、心から全日本王者と言えるようになったと思う」とねぎらっている。

「やっと昌磨が昌磨らしく戻ってこられてよかったなってすごく思いますし、『だからこそオリンピックの銀メダリストになれたんだよ』って僕は思っているので」とコメントした上で、羽生らしい勝気さものぞかせた。

「『こんなもんじゃねえぞ』って、これから頑張ります」

 そして羽生はその言葉通り、翌年の全日本(長野)で優勝している。その羽生のフリーを、2位になった宇野はリンクサイドで観ていた。

「『自分の目標となる選手が、すごく偉大な選手なんだな』と久々の大会に出て改めて痛感して。『うれしかった』というのは失礼かもしれませんけれども『また頑張ろう』と思いました」

 冒頭のコメントの中で、宇野は「プロに転向されてもゆづくんは変わらず牽引し続ける存在だと僕は思っています」とも述べている。平昌五輪でともに表彰台に立った二人が日本の先頭を走り続けてきた、一つの時代が終わった。(文・沢田聡子)


●沢田聡子/1972年、埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。シンクロナイズドスイミング、アイスホッケー、フィギュアスケート、ヨガ等を取材して雑誌やウェブに寄稿している。「SATOKO’s arena」

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