とはいえ「トラックまでの運搬料」が発生するのなら、ホームページに明記してほしいものだ。こちらは、マンションの5階という情報は申し込み時に伝えている。

 前出の自治体の担当者に聞くと、トラックに運び込んだ後になって、高額の「運搬料」を請求してきた事例もあったそうだ。これも問題はないのか。

 古藤弁護士が続けて解説する。

「トラックに積み込んだあとに運搬料を請求することは、当事者の合意に反することであるのは間違いないです。ですが、その場で売買契約を締結することになった場合、売買契約書は『代金を支払い、かつ、物品の引き渡しを受けたとき』『直ちに』交付するということになっています。作業をしている時点で売買契約書が存在しなくても、法律上違反にはなりません。そこを、悪用されているとも言えます」

 法の“穴”をうまく利用しているということか。独居の高齢者や女性などは、重い家具などを処分しようと思っても、自分で運べない人は多いだろう。同様の“被害”は増え続けてしまうのか。

 古藤弁護士はこう続ける。

「荷物の積みこみなどに手間や時間がかかるため、一度作業が終わってしまえば『契約を白紙に戻し、すべてを家の中に戻してほしい』と思っても、事実上は難しいと思います。『もう面倒だから払ってしまおう』となりやすい心理をうまく突いているなと思います。また、業者に頼むということは、家族や友人など頼れる人が周りにいない場合も多いのではないかと思います。そういう点も被害が大きくなりやすい要因かと考えます」

「無料」の文言に要注意

 古藤弁護士は、作業を開始する前に、何の作業をするのかや、それにかかる費用を明確にしておく必要があると話す。費用に納得できなければ、その時点で断ればいい。手間がかかっても書面やメールなどで事前に見積りを取ることや、クーリングオフの手続きをとることも重要だという。

 また、「無料」の文言にも要注意だ。

「家電リサイクル法の適用対象になる家電などについて、『回収無料』をうたっている業者がいますが、本来はお金がかかって当然の業務について無料としている点で、適切な廃棄処理を行っていない可能性が高いです。もし依頼した業者が不法投棄した場合、業者の関与が立証できないと、もとの所有者が不法投棄の責任を問われる場合があります」(古藤弁護士)

 ネットの広告はとても印象良く仕上げているものが多い。田舎の親がトラブルに遭ったり悔しい思いをしたりする前に、アドバイスしておいた方が良いかもしれない。

(AERA dot.編集部・國府田英之)

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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