
作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、岸田首相の内閣改造について。
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杉田水脈氏が総務政務官に任命された。岸田さんという人が、よくわからなくなってきた。
「女性はいくらでもウソをつける」との暴言が大きな問題となり、辞職を求める署名に13万筆超が集まった杉田衆院議員。雑誌への寄稿に「LGBTは生産性がないから税金で支援する必要がない」といった趣旨を記したこともある。イギリスBBCが伊藤詩織さんの性被害に関するインタビューをした際は「(被害者には)女性として落ち度がある」「(誘いやセクハラを)断ったりするのもスキルのうち」と答えていた。国会の演説で「男女平等は絶対に実現しえない反道徳の妄想です」とキッパリ断定していた姿は目に焼きついている。
そういう人を、岸田さんは総務政務官に任命したのだ。自民党がそれだけ人材不足ということか、それともあえて挑発的人事に挑戦したのか。杉田氏を批判する“私たち”の声など、どうでもいいということか。
いったい、岸田さんとは、どういう人なのだろう。
総裁選のとき、岸田さんは自らの「聞く力」を、ボロボロのノートを手に、さんざんアピールしていた。「(このノートに)国民の声を書き留めてきた。1年で3冊、10年間で30冊!」と。衝撃だったのは、そのノートがポケットサイズ(A6)で48枚のミニノートだったことだ。フツーに考えて「国民の声を書き留めた」と自慢する量ではない。今になって岸田さんには聞く力がそれほどあるわけでもないことがわかってきた……というか、そもそも本当に聞くつもりがあったのかどうかが、わからなくなってきた。
私の周りでは岸田さんの評価は決して低くはなかった。安倍・菅政権の流れから比べたらずっといいと言う人もいた。「広島出身の人だから」「自民党の中では話のわかる人だから」と、期待をする人も少なくなかった。それもこれも今思えば、岸田さんがどういう人かよくわかっていなかったからこその期待だったのだろう。安倍さんが亡くなってから今回の内閣改造まで、岸田さんを見る目が、私自身、どんどん変わってきている。