腸の水分調節機能には個人差があるため、便の硬さは生まれつきの体質に左右されます。水分や食物繊維をしっかりとっても便秘になりやすい人は、たくさん汗をかく夏に、より便秘になりやすくなるもの。なかでも1~3歳の小さい子どもは便秘が「トラウマ」になりやすく、慢性化・重症化しやすいので、早い段階で大人が気づいて、きちんと治療することが重要です。パルこどもクリニック院長で「小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン」作成委員会委員長でもある友政剛医師のお話を、前編後編に分けてお届けします。前編に続き、後編では「子どもの便秘の治療法」を紹介します。
【写真】教えてくれたのはパルこどもクリニック院長 友政剛医師
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赤ちゃん、特に1カ月未満の便秘は、生まれつき腸や肛門に病気があることも考えられるため、まずは専門の医師の受診がすすめられると、友政医師は言います。
「検査をして病気がなければ、1歳ごろまでの治療は比較的容易です。一方で、1~3歳くらいまでの子どもは硬い便が肛門を通る時の痛みがトラウマになりやすく、その恐怖から便を我慢してしまい、便秘が慢性化・重症化しやすいのが難しいところです」
■市販の薬やかん腸はリスクが大きい
ドラッグストアでも下剤は販売されていますが、その多くは「アントラキノン系下剤」で、大腸に刺激を与えて便意を促すものです。腹痛などの副作用があり、癖になりやすいことからも、子どもには使えないことになっています。詳しくはこのあと解説しますが、1~3歳の子どもにとってかん腸はトラウマになりやすく、乱用は避けなければなりません。「慢性の便秘を家庭でケアするのはおすすめできない」と友政医師は言います。慢性化した子どもの便秘は、専用の診療ガイドラインも発行されているように、早期に病院で治したい「病気」なのです。
■「痛み」をなくし「恐怖」をやわらげる
友政医師によれば、子どもの便秘治療の原則は「便秘の悪循環を断ち切ること」です。まずは便をやわらかくする下剤を服用し、痛みなく排便ができるようにします。この便をやわらかくする薬(下剤)には「マグネシウム製剤」という錠剤タイプと、ジュースなどの水分に溶かして飲む「ポリエチレングリコール製剤(商品名・モビコール)」があります。
便をやわらかくする薬は、ほとんどの子どもに効果があります。薬は効果が弱ければ増やし、効き過ぎたら減らすという方法で、その子どもに合う量に調整していきます。そして「痛くない排便」をたくさん経験することで恐怖感をやわらげ、自発的に便を出せるようになってもらうことが目標です。
「ただし、硬くなった便がまだ腸に残っている場合は、まずはそれを出すための処置が必要です。便をやわらかくする下剤は、新たに作られる便に効果をもたらすものなので、すでに腸の中で硬くなっている便には効果があまり期待できないのです」