北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表
北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

「例えばどんなものがありました?」と、おそるおそる深掘りしてみると、思い出すのも気持ち悪いという感じで、彼女が見たものを話してくれた。

「脳みその形をしたものがありました。そこに男性器を入れて使うものです。幼女の足の裏に穴を開けた商品もありました。小さな女の子の体が全てパーツにわかれていて、全てに穴をつけています。それが商品として売られていること、そのことが問題にならないことに衝撃を受けています」

 同行したスタッフは男性向けアダルトショップで長年勤めてきた経験もあり、ある程度“免疫”はあるほうだ。それでも「どんどん酷くなっているような気がします」と言った。そのスタッフによれば、2000年代ごろから足の裏に穴を開けたマスターベーショングッズはあったという。ただ昔は成熟した女性に「踏みつけられる」というイメージが中心だったのが、最近は明らかに幼女のカラダに侵入するモノに変わったという。

「加害欲があからさまに商品になってきていると思います」

 “加害欲”という言葉を私は初めて耳にしたが、女性の体をバラバラにして、一つ一つ壊していくような、そういう“欲望”を、 “性欲”と、あたかもナチュラルな欲望のように表現するよりは、文化につくられた“加害欲”と表現することが正確のようにも思う。気軽なエロ、本能としての性欲、男の息抜き……そんな「軽さ」をまといながら、女性に対する暴力性を正当化するような商品が、日本のアダルトショップにはあふれている。

「日本社会が、性差別社会だというのがよくわかります。変えなくちゃいけないことはあまりにもありますね」とドイツのメーカーの女性は本当に怖がっているような感じで話してくれたが、売られているものに対する嫌悪だけでなく、彼女がお店の中にいると、ジロジロと顔を見ようとしたり、自然を装う感じで彼女の周りを行ったり来たりしたり、男の視線を避けるためにいったん外に出るとついてきたりなど……ドイツのショップでは起きないようなことも起きたという。男性側からすれば、加害の意識もなく、アダルトショップに女がいる、珍しい、顔を見たい、というあまり深く考えない行為なのかもしれないが、こちらからすれば怖いし、気持ち悪いだけである。

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“加害欲”を煽るアダルトマーケット