朝日ジャーナル1987年1月30日号
朝日ジャーナル1987年1月30日号

ぶっ殺すぞ

 原理運動から子供を親元へ取り戻す運動をしている名古屋市の成田美代子さんは、もう少しどぎつく脅されている。1985年、国際勝共連合主催の名古屋集会に出席したり、祝電を打った政治家にあてて「議員が関係すると私たちの運動が難しくなる。関係しないでほしい」という趣旨の手紙を出したのがきっかけだ。

「てみゃーは共産党か。勝共の役員を脅しやがって。てみゃーみたいな者はぶっ殺すぞ」という、口汚い男の声の電話が皮切りで、「装甲車を突入させるぞ」「ただではおかない。覚悟しとけよ」といった脅しと無言電話。老人の声で「いまにえらい目にあうよ。死んだら地獄へ行くよ」というのもあった。しばらくして勝共連合婦人部を名乗る4人が自宅へ抗議に押しかけた。

1日7000件の電話

『神奈川新聞』が「悪質開運商法、根絶を」の記事をのせたのは86年6月1日。高額な印鑑や壺を売りつけられた被害者救済のため、弁護士グループが開いた説明会の報道だった。

 翌日夜からいやがらせ電話が一斉に始まった。古い社員名簿を見たらしく、元編集局長、報道部長の自宅へ各3、40本。内容はハンで押したように「壺は悪くない、効くんだ」といった趣旨。同様の電話は新聞社へも来た。2日目は無言電話になり、社へ約7000本。一方、ようやく番号を知ったのか現社長、現編集局長の自宅へ「子供が◯人いるだろう。注意しろ」といった電話があった。

 同紙は社会面で「“暴力電話”には屈しない」と宣言したところ、怪電話はぴたりとやんだ。

韓国語で絶句

 朝日新聞社の石川厳記者の自宅に無言電話がかかり始めたのは昨年12月21日午前9時ごろ。東京都北区区議会のスパイ防止法への対応に関連し「反対決議阻止図り 勝共連合が働きかけ 無党派区議いきさつ明かす」という、同記者らが取材した記事が社会面に出た3日後になる。

 無言電話にまじり、朝日新聞の同僚の名をかたった所在確認電話、年が明けてからは「勝共連合の者だ」とだけ言って切る電話が続いた。ある時、同記者は試しに韓国語で「どなたですか」とやり返した。相手は残念ながら一言もわからない様子。日本語で「区議と連絡をとってるのか」とだけ言ってガチャン。以後かかって来ない。

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