安倍晋三元首相銃撃事件を機に、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と政界の癒着が次々と明るみに出ている。そもそも旧統一教会が話題に上ったのは1980年代。印鑑や壺(つぼ)などを高額な値段で売りつける「霊感商法」が社会問題となった。そのきっかけとなったのが1986年に「朝日ジャーナル」が始めた霊感商法追及キャンペーンだった。ここでは、朝日ジャーナル1987年1月30日号に掲載された記事を紹介する。
※以下に記載された年齢、所属、肩書きなどは、すべて当時のまま
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霊感商法と国際勝共連合。最近、両者に共通する現象が目立っている。それを批判、報道した者に対し、誰によるともしれぬいやがらせが始まる、という事実だ。とりあえず目についた五例を紹介したい。
温泉めぐり
北海道消費者協会の谷口弘一専務理事は1984年春、北海道放送の主婦向け番組で、霊感商法を含む悪徳訪問販売について話した。
その晩、谷口さん方に突然3軒のすし屋から頼まないすしが届いた。それから二週間、同種のいやがらせが続く。
まず最初の週は毎日2軒ずつ、定山渓温泉のホテルから「お二人分の予約を承っていますが、まだですか」との電話。夜は毎晩すすきののバーから「カラオケを用意してお待ちしていますが……」。ほかに貸衣装屋から礼服が届き、ガラス屋さんが2軒来訪。「あなたがお入りになるという電話がありましたので」と生命保険の勧誘員も1人。もちろん覚えのないことばかり。翌週は洞爺湖温泉のホテルから毎晩1軒ずつ予約確認の電話が来た。
谷口さんは、いやがらせの主は霊感商法関係者に違いないと判断している。
理由の1、放送直後、放送局と協会に、霊感商法販売員と見られる20代から30代前半の女性12、3人が押し寄せ、「幸せになっている人のことも紹介してください」。
理由の2、クレーム処理で顔なじみの霊感商法の販売会社社長が聞かれもしないのに電話してきた。「私は、いやがらせなんかやってませんから」。