「人との接触の8割削減」を呼びかけ、「8割おじさん」と呼ばれた西浦博さんも大学教員だ。現在、京都大教授をつとめる。

 白鴎大教授の岡田晴恵さんは連日テレビに登場し拡大防止策を訴えていた。新型コロナウイルスが最初に拡大したころ、白鴎大のウェブサイトでは岡田さんの出演番組がすべて紹介されていた。20年3月1~15日で32回。1日2回以上出る日もあったということだ。ほかに、大阪大教授の忽那賢志さん、神戸大教授の岩田健太郎さん、国際医療福祉大教授の和田耕治さんらを、テレビ、新聞でよく見かけた。

 22年に起きていまも続く、ロシアのウクライナ侵攻については国際政治学分野の大学教員たちが、その行く末を解説している。筑波大教授の東野篤子さん、慶應義塾大教授の廣瀬陽子さん、千葉大教授の酒井啓子さん、立命館大准教授の越智萌さんなど、女性研究者が積極的に発言している。

■スター教授の役割は社会貢献ともいえる

 新型コロナウイルスの感染拡大、ロシアのウクライナ侵攻で発言する専門家たちは、顔と名前がすっかり売れたという意味では、「大学スター教授」といっていいだろう。大学の存在意義はこうしたところで発揮される。

 メディアでよく見かける大学教授には情報番組のコメンテーター、ベストセラー作家も多い。獨協大教授の森永卓郎さん、明治大教授の齋藤孝さん、慶應義塾大の岸博幸さんらだ。バラエティー、クイズ番組に出ることもあり、視聴者によっては人物を知ってはいるが大学教授だという肩書は知らないという人もいるかもしれない。

 大学教員という本業以外で著名になったことによって、「タレント教授」と呼ばれることがある。本人たちにすれば、俳優、芸人、歌手などのタレントと同じように扱われたくはない、という思いを抱く人もいるだろう。

 しかし、大学教員の発信はわたしたちを知の世界に誘い込んでくれる。天変地異、戦争や貧困、事故が起こったときにやさしく丁寧に解説し、思考の道筋を示してくれる。

「タレント」性を帯びることによって、大学教員が身近で頼りになる存在になっていることはたしかだ。メディアへ精力的に発信し、社会貢献を続けてほしい。

教育ジャーナリスト・小林哲夫

※AERAムック『就職力で選ぶ大学 2023』より

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