
稲田さんの死因は、10カ所以上刺されたことによる失血死だった。左肺を貫通するほど強く刺されていたといい、顔面を何度も殴打されていた。
検察側は、
「無残にも殺され、強い殺意がある計画的な犯行」
と厳しく指摘した。
そして、宮本被告の結婚指輪が犯行現場に残されていたことや、被告が履いていた靴から稲田さんと同じDNAの血痕が検出されたことからも、
「犯人性は間違いない」と主張した。
動機については、
「一方的に好意を募らせ、満たされない思いを晴らそうと犯行に及んだ」。
32歳年上の男が、嫉妬心からの犯行――。
当時、関係者に聞いた話では、宮本被告は、稲田さんが別のカラオケパブから独立し、「ごまちゃん」をオープンした2021年1月から通いつめていた。
「まゆちゃんラブだね」
と、常連客に声をかけられると、
「そう、まゆちゃんラブ」
とうれしそうに言っていたという。
稲田さんの出勤日には店に行き、昨年1月から犯行の6月11日まで83回来店していたと検察側が明かした。
店を離れても宮本被告は、LINEで執拗(しつよう)に返信や電話の応答を求めたという。稲田さんからの電話や返信がないと、
「電話に出ないのはおかしい」などと、日付が変わる深夜まで繰り返し抗議していたという。
周囲から、
「おっさんストーカー」などと揶揄(やゆ)されていた末の犯行だった。
稲田さんをよく知る店の常連だった客が話す。
「宮本被告は、店が閉店しても居座り続けたこともある。稲田さんからLINEの応答がないと激怒していたこともあった。店の外で稲田さんを待ち伏せて、自宅を突き止めようとしていたとも聞いた。稲田さんは、宮本被告の執着ぶりに不安を募らせて、『様子を見てきて』『(宮本被告が)怖いから帰らず一緒にいてほしい』と漏らしていた」
宮本被告は裁判中、独演会のように、
「裁判の公判前整理手続きで、裁判官にも死刑にしてほしいと言っている。検察官にも、死刑求刑して、と話した。弁護士にも、被告人質問をしないようにとお願いした。しゃべりたいことがあれば、手を挙げて発言を求めるから」
と勝手な言い分を述べた。