本人には信仰心がなくても、親の宗教で人生が左右される「宗教2世」。今回話を聞いた世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の2世は、親から日常的に暴力を振るわれ、信者との結婚を勧められていたのが嫌で姉弟で逃げたという。そして、旧統一教会が、結婚相手選びに独自のマッチングアプリを使っていることも明かしてくれた。
「今は信者同士のマッチングアプリで、合同結婚式の相手を選んでいることがよくあるようです」
そう話すのは、両親が旧統一教会の信者という宗教2世の女性Hさん(20代半ば)。
いまや旧統一教会もマッチングアプリを使って結婚相手を決めていると聞いて驚いた。
合同結婚式(2022年は祝福合同結婚式)といえば、霊感商法と並び、かつての旧統一教会の象徴的な行事であり、文鮮明氏が写真を見てさまざまな要素を「霊視」し、ふさわしい相手を決めていると紹介されていた。
それが、「俗世間」と同様のデジタルのシステムを採り入れ、アプリで選ぶというのは、どうにも違和感があるが……。
マッチングアプリの話は後述するが、幼少時代から宗教2世として生きてきたHさんが、父親らから受けてきた「虐待」にも触れておきたい。
取材で会ったときのHさんは、セミロングにブラウンのメッシュを入れた髪形で、ノースリーブのワンピースがよく似合っていた。
「こんな格好も教会にいるときはできませんでした」
と快活に話すその彼女が、「これ見てくださいよ」と左手の小指を見せた。
「こっそり彼氏と付き合っていて、お茶を飲んだくらいなのですが、それが父親に見つかると、殴られ、引きずり回されました。そのときに小指を骨折しました。今もまっすぐには伸びません」
たしかに、Hさんの左手の小指は湾曲したままで伸びない。
「親は教会に寄付ばっかりするものだから、病院で診てもらうお金がない。父親は『男と付き合うなんて、地獄に落ちるぞ』と吐き捨て、ほったらかし。2日ほど痛みに耐えたけど、どうしようもなくなって叔母に泣きつき、病院に連れていってもらいました。高校2年のときでした」