宗教2世は、旧統一教会でいうところの「祝福2世」。Hさんは、合同結婚式で両親が結ばれ、長女として生まれた。3歳下に弟がいる。
「小さいときから遊び場は教会でした。何かあれば教会に連れていかれ、見よう見まねで祈りをささげるのが日常でした。最初はそれが当たり前でしたが、友達とも遊べない状況が続き、小学2、3年生になると教会が苦痛で仕方ありませんでした。嫌がる私を両親は引きずるように連れていきました」
自由に遊べなかったというHさんは、
「寒い冬、遊びたくて教会から逃げ出し、深夜まで街中を歩き続け、警察に保護されたこともあります。そのとき、『教会が嫌で逃げた』と警官に言いましたが、『早くお父さん、お母さんのところにお帰り』と説得されるばかりでしたね」
と振り返る。
今のHさんのファッショナブルな服装からは考えられないが、小中高とおしゃれとは無縁だったという。
両親は共働きで、母親は旧統一教会の「ダミー会社」にも勤務していた。稼ぎは大半を教会への寄付につぎ込み、食事は白飯と、スーパーの閉店間際で安くなっているときに買う「おつとめ品」の総菜が1、2品。服も教会から中古や、信者のおさがりをもらい、髪も理髪店に勤務した経験がある男性信者に年に数回、切ってもらうだけだった。
「ずっとダサイ格好だったので、小中学校ではいじめられました。中学では、私が旧統一教会の信者と知っている同級生がいて、『宗教の女』とからかわれ、本当につらかった。なぜなら、私はまったく旧統一教会を信じていなかったからです。両親に怒られるから、信じているふりをしていただけでした」
高校に進学すると、生活苦から逃れようとアルバイトをはじめた。
しかし、両親はHさんがアルバイト代を手にすると、
「家計が苦しいからお金を入れて」
と全部取った。そこで、両親には内緒で別のアルバイトを掛け持ちし、コツコツとへそくりをはじめた。