東京都から国に出された要望書
東京都から国に出された要望書

 東京都の担当者はこう説明する。

「感染法上の位置づけ(類型)など法令上の取り扱いはどうなるのか、オミクロン株の特性を踏まえた基本的対処方針の全面的改訂、そういったことを含め、まだ国から全体像が示されていません。ウィズ・コロナの新たな段階への移行と社会経済活動の回復との両立に向けて、現場が混乱しないよう、国には全体像を示すよう求めているところです」

 今後のコロナ対応について、岸田政権は何をすべきか。医療政策に詳しい、キヤノングローバル戦略研究所の松山幸弘研究主幹はこう語る。

「行動規制を緩和していく方向性は国民も納得していると思いますが、そこに安心できる材料を見せられていない状況が続いています。首相がリーダーシップを発揮するのであれば、『国民が安心できる体制をつくりました』と言わないといけません。そのためには医療供給体制として、コロナに対する通常医療は民間でみてもらい、重症化しても国公立の病院がすべての患者を引き受けるといった体制を整備することが考えられます。また、後遺症についてアメリカでは国が総力を挙げて取り組んでいますが、日本の政府は対応しきれていません。国は『感染しても大丈夫』という姿を示す必要がある」

 明確なコロナ政策を示すことができなければ、岸田政権の支持率低下は、歯止めがかからない可能性がある。

(AERA dot.編集部・吉崎洋夫)

著者プロフィールを見る
吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

吉崎洋夫の記事一覧はこちら
暮らしとモノ班 for promotion
「更年期退職」が社会問題に。快適に過ごすためのフェムテックグッズ