小池百合子都知事。国にコロナ政策の全体像を示すように要望書をたびたび提出している。
小池百合子都知事。国にコロナ政策の全体像を示すように要望書をたびたび提出している。

 しかし、こうした見直しについて現場からは不安の声が上がっている。先の小坂院長はこう語る。

「全数把握の見直しについて、首相は『全数把握が医療現場や保健所の負担になっているから』という理由を述べていますが、医学的な見地からの説明はありません。経済など他の要因からかじを切ったようにも見え、不安を感じます。『コロナは今では普通の風邪』といった意見もありますが、後遺症のことはまだよくわかっておらず、慎重な対応が求められます。また現在は、オーストラリアでインフルエンザが流行しており、日本でも『第8波』と同時に流行する可能性がある。対応できる医療体制が整えられているかも示し切れていません」

 同じような声は、自治体からも上がっている。

 9月1日、東京都の「新型コロナウイルス感染症モニタリング会議」で小池百合子都知事は、政府に対して「基本的な方向性をはっきりと示し、国民と共有してほしい」と要望書を出したことを報告した。さらに14日にも要望書を提出している。AERA dot.が入手した要望書にはこう記されている。

<感染症法上の措置を緩和したが、新型コロナウイルスに係る感染症法上の位置付けは変更されていない。新型コロナウイルスの特性を踏まえて、感染症法上の位置付けについても早急に検討すること。また、併せて特措法上の位置付けについても、実態に応じた見直しを行うこと>

<現在の基本的対処方針は、これまで数次の変更を経ているものの、基本的には昨年 11 月に決定した「次の感染拡大に向けた安心確保のための取組の全体像」をベースにした内容となっている。(中略)オミクロン株の特性を踏まえ、基本的対処方針等を全面的に改訂すること>

 その他にも<インフルエンザ等の同時流行への対応>、<国所管の公的病院において、中等症以上の高齢患者を積極的に受け入れること>といった要望が出されている。これらの要望の根底にあるのは、政府がコロナ対応の全体像を示し切れていないという懸念があることだ。

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