吉田茂元首相の国葬当日の様子をつたえる東大新聞
吉田茂元首相の国葬当日の様子をつたえる東大新聞

 東京大の学生、教員、事務職員はなぜ、国葬に反対したのか。

 東京大学新聞は国葬に反対するポイントを、自治会、教職員組合など各団体からの主張をまとめてこう伝えている。

(1)国葬が行われていること自体が不当

(2)弔旗掲揚、黙とう、歌舞音曲の停止などは思想、信教、言論などの自由の侵害

(3)吉田氏の戦後政策、レッドパージ、再軍備、片面講和などの批判

(4)自民党政府は国葬を政治的に利用

 今回の安倍元首相の国葬に反対する意見と通底するところはいくつかある。

 では、国葬当日、東京大の学生はどんな様子だったのだろうか。国葬真っ最中の時間帯、駒場キャンパスの様子を描いた報道があった。

「午後二時十分ちょうどは四時間目の授業が始る時間で、黄色く色づいたイチョウ並木の下を教室に急ぐ学生が、行き来する。黙とうする学生は一人もいない」(朝日新聞1967年10月31日付夕刊)

 早稲田大についてもこんな記事があった。早稲田祭を前にしてその準備で忙しく、国葬どころではなかったようだ。

「大隈講堂と二十一号共通教室を結ぶ“メーンストリート”では、学生たちは鉄パイプのやぐらを組上げたり、催し物を知らせる大看板づくりに精いっぱいで、午後二時十分に黙とうしている学生の姿は見当たらなかった」(毎日新聞同付夕刊)

 国葬に参列した学生も報じられている。

「自衛隊員、防衛大生らのめだつ中で、白紋付、長羽織にタスキがけというある私大応援団員は、『国葬に参列するのはあたりまえ。吉田さんは日本の大先輩だ』と、応援団の好きな先輩という言葉を使って愛国心を説く」(「アサヒグラフ」同年12月17日号)

 当時、大学生だった人に話を聞いてみた。

「翌週の授業のとき、ある学生が『国葬だからといって休講にするのはおかしいじゃないですか』と言ったら、教師が『休講になんかしていないよ。君がサボっていただけじゃないか』と言い返していたような気がします。賛成とか反対とかの議論はほとんど記憶にない」(当時・東京大1年)

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