
岩井秀人さんの傑作「おとこたち」がミュージカルとなって公演される。22歳から85歳までの4人の男の人生を描いた作品だが、そのうちのひとりを演じるのが、芸人はもとより、歌手や司会者などさまざまな顔を持つ藤井隆さん。藤井さんが、自身の若手時代を振り返った。
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■「喫茶店をやりたいです」
歌も、芝居も、お笑いも、司会も、自分が「うまい」とは思っていない。でも、「好きです」「楽しいです」とは言える。一つの道を突き詰めることが美徳だと思われがちな世界で、これまでも、「君はいったい何が本業なの?」など、専業でないことを揶揄(やゆ)されたこともあった。でも「声を大にして言うつもりはないですけど」と前置きしながら、「その場その場で『楽しい!』と思えるのは長所かもしれませんね」と控えめな口調で続けた。
今、いろんな仕事を楽しめている状況は、吉本新喜劇以外にも、20代の頃さまざまな業界のプロたちに鍛えられたおかげだと思っている。
「本当にいい方たちに巡り合った。僕は、人運に恵まれたと思っています。あるとき、放送作家さんに、『他の仕事をやるってなったら何がしたい?』って聞かれて、僕が、『喫茶店をやりたいです』って即答したんですよ。そしたら、もうスッゴイ怒られて(笑)。『ここに、君のことばっかり考えてるスタッフがいるんだぞ。ここにいるスタッフは、自分の名前をパソコンで打つより、藤井隆って打つことのほうがずっと多い。毎日みんながあんたの仕事のことばかり考えているのに、なんで当の本人が別の仕事をしたいなんてスラスラ言える? もっと今の仕事に集中しろ!』って怒られて(苦笑)。レコード会社の社長さんも映画の監督さんとかも本当に厳しかった。映画は、まだフィルムの時代だったから、近くでフィルムのカメラがカタカタカタカタ回ってる中、NGなんか怖くて出せないですよ。本当によく、こんな新人に愛情を持って接してくださったな、と」