とても謙虚で、柔らかい物腰の藤井さんだが、自分ルールの中で、「これだけはできない」「そういうことは言えない」と思うことは若い頃から貫き通した一面も。

「ふわふわしてるのに、変に気高いところがあるんです(笑)。クイズ番組のMCをやっていたとき、不正解だった人を『バカと言ってイジれ』と指示が出たときは、『できません』って突っぱねた。そしたらすぐ、空前のおバカブームが来たんですよ。そこでバカって言ったほうが、スムーズな流れだったのかもしれませんが、それでも人のことを『バカですね』とは言えなかった」

 インタビュー中も、「僕の発言で誰かを傷つけるのは絶対嫌なので」と慎重に言葉を選ぶ。

「人に嫌われてもいいとか、わかってくれる人だけがわかってくれればいいとか、思ったことないです。『おとこたち』に、『依頼されたことがうれしくて』みたいなセリフがあるんですが、自分の仕事は、呼んでもらえることが価値があると思っています。たくさんの演者がいる中で『藤井にこれをやらせてみよう』と思っていただけることがありがたい。諸先輩方はみなさんお元気ですし、つい、この状況がずっと続く気がしちゃいますけど、自分があと何本できるかなんて、本当はわかんないじゃないですか。体を使うようなものとか、いつまでできるかって思うと、少し焦ったりもする。でも、自分が『やりたいです』って言っても、仕事が来ないときは来ないから。求められていることのありがたさを、今回の舞台でもかみ締めています」

(菊地陽子 構成/長沢明)

週刊朝日  2023年3月10日号より抜粋

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