■言葉を共有し一体感
K-POPにはこのような造語が曲名や詞などにちりばめられており、ファンダム(fanと「集団」の意味をもつ接尾辞domを合わせた造語で、ファンクラブなどを指す)の間では当然知っておくべき用語となっている。意味不明の言葉をファンの間で解釈させることで、まるで暗号を共有するような親近感が生まれ、それがやがて一体感、連帯感へとつながっていく。
ここには、韓国の詞(詩)に対する文化の高さも影響しているだろう。日本では詩集はあまり売れないばかりか、SNSなどで詩を書こうものなら、「ナルシスト」と思われがちだが、韓国では詩を書くのも読むのも一般的なこと。映画やドラマにもモチーフとしてよく登場する。
ENHYPEN(エンハイプン)は、楽曲「WALK THE LINE」を、「線は僕にとって悪夢だった。」というインパクトあるテキスト映像と日本人メンバー、ニキの読み上げで始める。激しくテーブルをたたく7人のパフォーマンス。特徴あるマイクさばきと手を使ったヴォーグダンスで、国境線や境界を表す「線」への怒りを、抽象的かつ重厚に表現してみせた。
■最新技術とダンス融合
これらの舞台の演出に、ある最新鋭の技術を発見した。アメリカの人気番組「Americas’Got Talent」に出演したLEDテクノロジークリエイティブ集団MPLUSPLUS(エムプラスプラス)が開発した技術だ。彼らから見たK-POPの舞台のクオリティーについて聞いた。
「韓国の演出チームが3年前に、うちのYouTube映像を見て東京のラボに見学に来た。今回、SKZのLEDマスクとENHYPENのLEDBookを手掛けたのだが、最新技術をダンスの演出に変換するセンスがすばらしく、この3年で驚くほど進化している。オンラインでの打ち合わせが非常にきめ細かく、現場では想像を超えた出来栄えに驚かされた」(運営スタッフ)
細部にまで徹底してこだわる制作姿勢。「神は細部に宿る」という名言を想起させる。
MAMAの終演後、興奮冷めやらぬファンたちの声を聞くと、K-POPがなぜこれほどに人を引き付けるのか、キーワードが浮かび上がる。
「ENHYPEN、ギャップがすごい。普段はカワイイのに舞台ではカッコよすぎ」
「J-HOPEが今回来てくれるなんて思ってなかった。受賞の喜びを自分の携帯で舞台からJINくんに生電話するなんて、興奮。家族以上の絆を感じた」