「2020ユーキャン新語・流行語大賞」のトップ10に「フワちゃん」が選ばれ、あいさつをするフワちゃん
「2020ユーキャン新語・流行語大賞」のトップ10に「フワちゃん」が選ばれ、あいさつをするフワちゃん
この記事の写真をすべて見る

 フワちゃんの登場は、テレビの世界における1つの事件だった。カラフルな衣装を身にまとい、ハイテンションで誰にでも馴れ馴れしくタメ口で絡んでいく、謎のYouTuber芸人。そのキャラクターはもちろん最初からインパクト抜群だったし、斬新でもあったのだが、客観的に見れば少々「やりすぎ」の感じもあった。

【写真】衝撃!47キロ減量で画像加工と見間違える姿に変身した芸人はこちら

 特異なキャラを背負って芸能界に飛び込んでくる人は、のちにそのキャラを持て余して苦しむことになりがちだ。『エンタの神様』出演がきっかけで人気が出たようなキャラ強めの芸人には特にその傾向があり、彼らは人気が衰えると「一発屋芸人」の汚名を着せられてしまったりする。

 フワちゃんもまた、どんなエンタ芸人にも負けないくらいのキャラの強さを持っていた。バラエティ番組でセオリーを無視して自撮り棒で写真を撮りまくる彼女は、あまりにもキャラが仕上がりすぎていて、そこからどうなっていくのかが想像しづらいようなところがあった。

 だが、余計な心配は無用だった。ブレークから2~3年経った今も、彼女はテレビの最前線で活躍している。基本的なキャラクターはほとんど変わっていないが、タレントとしての能力やポジションは格段に上がった。今では彼女を「一発屋予備軍」のように見る人はいないだろう。フワちゃんは芸能界に根を下ろし、1つのテリトリーを築くことに成功した。

 フワちゃんが長く生き残っている理由は、生来のセルフプロデュース能力の高さによるものだろう。彼女はお笑いコンビの一員として活動を始めて、解散してピン芸人になった後、YouTubeの世界で注目され始めた。もともとInstagramで自ら加工した「おもしろバカ画像」をアップし続けていた彼女は、映像制作にも同じような楽しみを見出した。

 明るさ、勢い、行動力、ビジュアルセンスなど、彼女が持っている強みがYouTubeの世界ではそのまま生かされた。しかも、彼女には暴走する自分を客観的に眺めるプロデューサーとしての冷静な視点も備わっていた。

著者プロフィールを見る
ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

ラリー遠田の記事一覧はこちら
暮らしとモノ班 for promotion
台風シーズン目前、水害・地震など天災に備えよう!仮設・簡易トイレのおすすめ14選
次のページ
「フワちゃん」に対して誰より冷静に考え、戦略を練る