「チームビジョンを理解し、適材適所の起用をすると思われていた。工藤監督(当時)も口を挟むことはなかったため、自分のやり方に固執しすぎるタイプなのが見えてしまった。柔軟性や状況への対応力など、監督就任のためにさらなる成長が必要だとわかった」(ソフトバンク担当記者)

「藤本監督は南海時代を知る昭和の野球人。しかし2011年に打撃コーチで現場復帰してから二軍、三軍監督も歴任して経験も豊富。若手選手に対して親身になって接する指導方法には定評がある。ファームでのコーチ歴が長く、球団の選手育成方針を熟知しているのも大きい。若手との過渡期を迎えつつあるチームには、適任と評価された」(在京球団編成担当者)

 小久保は侍ジャパンの監督を挟んだことにより、2012年の現役引退からソフトバンクで現場復帰するまでに時間がかかった。一方、藤本監督はこれまでの経験とチーム状況など、タイミング的に適任だった。小久保は将来的には指揮官を務めることが予想されるが、阿部と同じく今はその時期ではないようだ。

 とはいえ、やはり2人の存在は両球団にとって特別でもある。

「数年後に阿部、小久保の両監督が誕生するのは間違いないでしょう。例えば巨人では高橋由伸が現役を引退し、即監督として就任したがチーム成績は振るわなかった。結果として泥を被る形となった。阿部、小久保というレジェンドにはそうなって欲しくないという思いがある」(スポーツマーケティング会社関係者)

「名選手、名監督にあらず」という言葉がある。現役時代の経験、栄光に固執することでチームマネージメントが上手くいかなくなる場合があるからだ。

 だが、阿部、小久保の2人は時間をかけ指導者として成長している。周囲は早期の監督就任を望んでいるだろうが、じっくりと準備を進め「時が来る」のを待てば良い。満を辞して監督に就任した阿部と小久保が頂点を争う日本シリーズの舞台で対決する日が来るのを楽しみに待ちたい。(文中敬称略)