10月1日、NTTドコモはメタバース事業に本格参入するため、新会社「NTTコノキュー」の事業を開始した。従業員は約200人。今後600億円を投じるという。1年前、米巨大IT企業フェイスブックは社名を「メタ(Meta)」に変更し、メタバース企業を目指す姿勢を鮮明にした。すでに国内でもさまざまな企業が参入し、総務省もメタバースを活用するための研究会を立ち上げた。ところが最近、米アップルのティム・クックCEOは「普通の人が、メタバースが何なのかを理解できるとはとても思えない」と発言した。ITオンチの記者も、もれなくその一人だ。そこで、ここでは「メタバース」について、ITジャーナリスト・西田宗千佳さんにやさしく解説してもらった。
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「実は、メタバースって、よくわからないんですけど」
記者が小声で打ち明けると、西田さんは「ああ、その通りでしょうね。理想のメタバースはまだSFの話ですから」と言ってくれたので、ほっとした。
「例えば今、インターネットがどんなものか、知らない人はいないじゃないですか。でも30年前はよくわからなかった。あまりにも領域が広いので業界関係者も立場によってインターネットに対する考え方がバラバラで、個別に話を聞いても全体像はよくわからなかった。メタバースについてもまったく同じことが言えると思います」
現在、インターネットは水道や電気に準じる社会インフラになっている。メタバースが進化するとインターネット社会の到来に匹敵する新しい社会基盤ができるという。
いったい、それはどんな社会なのか?
「生活の中にメタバースがある、というイメージで一番わかりやすいのは映画『サマーウォーズ』ですね」
買い物、納税から医療まで
細田守監督が「サマーウォーズ」(2009年公開)で描いたのは、インターネット上の立体空間・OZ(オズ)。つまり、これがメタバースである。