さらに、西田さんがもう一つ挙げるのが生存権に関わる問題だ。例えば、「清浄にして豊富低廉な水の供給を図り」とある水道法は日本国憲法第25条の生存権に由来している。

「今後、大勢の人々がメタバースの中で会うとか、商品を購入するとか、そういうことが当たり前になる時代が実現するなかで、お金のない人がネットワーク回線を利用できずにメタバースに入れず、就業や情報の取得などで不公平が生じる可能性があります。生存権としてのインターネットやメタバース、といった視点での議論はまだ行われていません」

リアル、それとも美男美女

 最後に西田さんは興味深いことを口にした。アバターの好みは洋の東西によって大きく異なるという。

「欧米人は自分の姿に近いアバターを求める傾向がありますが、日本を含めたアジアでは自分の姿から遠いもの、たとえばアニメ的なキャラクターやぬいぐるみのようなものを求める傾向があるといわれています。さらに欧米でも自分とまったく同じアバターが欲しいという人がいる一方で、美男美女でありたいという人もいる。この辺りはどちらの意見もわかるなあ、と思いますね」

 将来、メタバースの世界で本人と同様なリアルな姿のアバターと着ぐるみのようなアバターが同じオフィスで働くことが違和感なく、当たり前になる時代がやってくるかもしれない。

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)

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