「NTTコノキュー」新事業説明会で「600億円投資」(写真/アフロ)
「NTTコノキュー」新事業説明会で「600億円投資」(写真/アフロ)

 現実世界では不可能な価値は、さらにある。

「コンサートのチケットを取るのは結構、大変ですよね。ましてや人気アーティストの目の前なんか、まず不可能。でも、メタバースの仮想空間なら常にベストな位置の席に座れます」

とはいえ、CGのアーティストが歌うのを見てもつまらないのでは?と記者が尋ねると、「アーティストの姿やパフォーマンスをすべてCGでリアルに再現する技術はすでにあるんです」と、西田さん。

「つまり、そういう新しいサービスをメタバースで提供しようと、さまざまな企業が考えているわけです」

今後10年で“理想”に近づくか

 しかし、現在ある個々の技術を結びつけて実現できたメタバースの世界は、ごく一部にすぎないという。

「現実世界のリアルさと比較したら、まだ1万分の1とか、10万分の1くらいのレベルです。アバターのCGにしてもあまりリアルではありません。体を動かさずに頭の中で考えるだけでコンピューターの世界の中を移動するのは無理なので、ジョイスティックのようなレバーでアバターが動くようにしている。それをスマホの画面で見て、頭にかぶるヘッドマウントディスプレーみたいなもので体験している、というのが今の段階です」

 では、近い将来はどうか? 西田さんの見立てはこうだ。

「一般の人からしたら、現在のメタバースは非常に稚拙なものに見えると思います。ゲームのようなもの、と思っている人も多いでしょう。でも、技術進化の速度から予測して今後10年のうちに少しずつ理想的なものに近づいていくと思います。そうすれば大きなビジネスになると考えている人が世界中にいて、投資を続けているわけです」

技術面「以外」にも課題

 メタバースには技術的な課題以外にも制度の問題もあると、西田さんは指摘する。

「制度の問題で最も大きいのが税金です。現在のネット上のサービスもそうですが、そこで売り上げが発生した場合、どこに税を納めるのか」

 問題解決への第一歩として昨年、米国のグーグルやアップル、メタ、アマゾンなど巨大IT企業の利用者がいる国には、工場などの拠点がなくても課税を可能とする「デジタル課税」のルール導入に、日本を含む136カ国・地域が最終合意した。

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アバターにも意識の差