信じて待っている家族への裏切――。訓練中に性被害を受けた元陸上自衛官の五ノ井里奈さん(23)が、加害側の男性隊員から直接、謝罪を受けた。10月17日に開いた記者会見で五ノ井さんは、男性隊員からの謝罪の言葉や手紙の内容、そして男性隊員の家族への思いを語った。
五ノ井さんは、男性隊員と対面する際の心境をこう話した。
「今まで事実が認められず、本人たちから事実を否定されることがありました。会う前は、怖さやいろんな感情がありましたが、(謝罪は)目的としてきたことだったので、強い気持ちをもって加害者たちの前に立ちました」
謝罪は、この日の午前10時半ごろから1時間程度。一人ずつ個別で受けた。加害行為をした男性隊員らは、五ノ井さんに不快な行為をし、苦痛を与えたことを認めたという。4人中3人は土下座し、涙ながらに謝る隊員もいたと、そのときの様子を語った。
五ノ井さんが受けた性被害については、内部調査により事実が認められたとして、陸上自衛隊トップの吉田圭秀陸上幕僚長と防衛省幹部らが9月29日に謝罪した。ただ、五ノ井さんは、一貫して加害当事者からの直接謝罪を求めてきた。1年以上が経ち、ようやく実現した。
五ノ井さんは、「どうして最初のうちに証言をしてくれなかったか」と男性隊員に尋ねると、1人の男性隊員は「3人をかばおうとして、見ていたことを『見ていない』と言ってしまった」「五ノ井さんがYouTubeやインターネットで勇気を出して真実を話している姿をみて、本当のことを話したいと思うようになった」。別の隊員は「家族にバレたくなかった」などと答えたという。
謝罪までに長い時間はかかったものの、五ノ井さんが実名・顔出しで訴えたことで、男性隊員に心境の変化も出てきたとみられる。
さらに、五ノ井さんは、4人に対して「この1年半、どんな顔をして、どんな思いで、どんな生活を過ごしてここにきたのか」と聞くと、4人は「大変申し訳ございませんでした」と、頭を下げていたという。