今年6月に開校した「VAMOS」御茶ノ水校の受付。入塾説明会は満席が相次いでいる(撮影/加藤夏子)
今年6月に開校した「VAMOS」御茶ノ水校の受付。入塾説明会は満席が相次いでいる(撮影/加藤夏子)

 塾経営者としては、すでに“成功者”といえる富永氏だが、自身の過去を振り返りつつ、現状を冷静に見つめる。

「自分は外資のコンサルや金融に就職するような“デキる奴”ではありませんでした。ただ自分自身を振り返ると、人の才能や良いところを見つけて、それを伸ばしたり支えたりすることは得意だったんです。“デキる奴”を支える仕事は向いている、という確信がありました。それが受験生の指導であり、サッカー選手の代理人という仕事につながっていると思います。ただ、塾で私がどんなに頑張って指導しても実際に勝負するのは生徒たちであり、合格できるかも生徒にかかっています。代理人の仕事も同じで、主役は選手たちです。つまり、仕事の“結果”を他人に預けているという点で、今どんなに順調でもいつ失速するかわからない。その不安は常に抱いています」

 富永氏がもうひとつの“顔”である代理人業を始めたのは、約8年前だという。

 幼少期をスペインで過ごし語学が堪能だった富永氏はサッカー関係者の知人も多く、海外志向のサッカー選手にスペイン語やポルトガル語を教える仕事を単発で引き受けていた。プロサッカー選手の練習は午前中が基本で、昼すぎからは自由が効く。進学塾も授業は夕方からなので、昼間は教室が空いている。双方の空き時間を有効利用して、知己のある選手に語学を教えるかたわら、富永氏は代理人の資格も取得。個人事業主として、細々と選手たちの代理人業を始めた。

 そんな富永氏に、ロンドンに本社を置く大手代理店事務所「CAA Base」(以下「Base」)から声がかかったのは2017年のこと。当時、「Base」は日本で事業拡大に向けてパートナーを探しており、そこで富永氏に白羽の矢が立ったという。

「採用候補は複数人いたらしいのですが、1年間ほどのテスト期間があり、そこで代理人として能力を審査されました。最終的には私だけが残り、正式に採用されました」

 富永氏によると、「Base」には世界中に20人ほどの代理人がいるが、日本在住の代理人は1人だけだという。ミッションは「欧州リーグで活躍できる選手」を発掘すること。その重責を日本では富永氏ひとりに託されている。現在は、吉田麻也(シャルケ)、田中碧(デュッセルドルフ)、シュミット・ダニエル(シント・トロイデン)、板倉滉(ボルシアMG)などA代表選手も多く所属している。

暮らしとモノ班 for promotion
【フジロック独占中継も話題】Amazonプライム会員向け動画配信サービス「Prime Video」はどれくらい配信作品が充実している?最新ランキングでチェックしてみよう
次のページ
生徒には「いろいろな生き方があっていい」