70~80代も多くはまず保存治療を試みる。骨がなかなかつかない、痛みがとれないといった場合は、速やかに痛みがとれて低侵襲なBKP(経皮的後弯矯正術)による手術をおこなう。90代では保存療法よりもBKP手術が優先だ。

「90代が一定期間ベッドで安静にすると、認知障害やからだの可動性の著しい低下によって元の生活に戻れなくなります。そのため、手術で速やかに痛みをとることを優先します」(同)

 BKP手術は前屈や後屈時に椎体そのものに動きがある状態であれば可能だ。骨折した椎体内にバルーン(風船)を入れて膨らませ、広げた空間に骨セメントを充填し固める。BKPは2011年の保険適用以降、安定した治療成績で普及が進み、椎体骨折手術の主流となっている。

「潰れた背骨の背側を両側約5ミリ切開するだけで、20~40分程度で終了し、ほとんど出血もありません。からだへの負担が非常に少ない。セメントが固まれば術後すぐ動けて、痛みもとれます」(同)

 低侵襲ですぐに痛みがとれる手術だが、一定のトレーニングと経験が必要とされる。状況によっては部分的にボルトで補強を加えることもある。

■骨粗鬆症薬選択は状況に合わせて

 術後は1週間ほど入院し、骨折前の状態に戻れるようにリハビリをおこなう。退院後も続発性骨折予防のコルセットを2~3カ月ほど装着して生活する。

 骨粗鬆症の治療も入院中に速やかに開始する。虎の門病院副院長の竹内靖博医師はこう話す。

「骨粗鬆症の治療は薬物療法、食事療法、運動療法をバランスよくおこなうのが基本です。高齢になって急に骨粗鬆症と診断され、薬物療法に抵抗を示す人もいますが、薬以外で骨量を増やし骨折を予防するのは難しい。薬を正しく飲めば二次骨折はかなり減らせるようになっています」

 骨粗鬆症薬は大きく分けて、骨の吸収(溶かす作用)を抑制する薬と骨の形成を促進する薬、骨に足りない栄養素を補う薬がある。

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