写真はイメージ(GettyImages)
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 この女性は、腰部脊柱管狭窄症に対して3年前からプレガバリン(商品名リリカ)を内服していました。脊柱管狭窄症とは、脊柱管が狭くなることにより、神経の圧迫や血行の阻害を引き起こし、痛み、痺れ、間欠性跛行を生じる病気です。腰部脊柱管狭窄症の罹患率は、40代では1%、50代では4.8%、60代では5.5%、70代では10%と、年齢の上昇とともに高くなることが報告されています。整形外科領域において一般的な疾患の一つです。

 脚の痛みや痺れといった症状や、脊柱管の狭窄により神経を圧迫している所見を認め、腰部脊柱管狭窄症と診断された場合、まずは薬物療法を開始します。一般的に、痛みに対して非スレロイド性消炎鎮痛薬が処方され、しびれや脱力感や間欠性跛行に対してプロスタグランジンE1製剤が処方されます。非スレロイド性消炎鎮痛薬を数種類試してみても痛みの軽減が認められない場合、神経疼痛緩和薬と呼ばれているプレガバリン(商品名リリカ)が使用されることがあります。

 リリカとは、米国ファイザー社が開発した疼痛治療剤であり、過剰に興奮した神経から発信される痛みの信号を抑えることで痛みを和らげ、鎮痛効果を発揮する薬剤です。2004年7月、欧州において末梢性神経障害性疼痛に対して適応が認められ、12月には、米国において帯状疱疹後神経疼痛(帯状疱疹に罹患した時に引き起こされた神経の炎症により、帯状疱疹による皮膚症状が消えた後も持続している痛み)と糖尿病性抹消神経障害に伴う神経障害性疼痛(高血糖状態が続くことにより起こる手足のしびれや痛み)の適応で承認されました。

 日本では、2010年6月に帯状疱疹後神経痛に対して発売が開始され、同年10月には末梢性神経障害性疼痛にも適応となっています。2012年6月には、繊維筋痛症に伴う疼痛に、2013年2月には神経障害性疼痛にまで適応が拡大されました。2016年度のリリカの国内売上高は862億円と、日本国内における医療品医薬品の売上高の第5位がリリカであり、疼痛治療剤の中では最も高い売上高を記録した薬剤なのです。

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痒みと痛みが次第に増強し……