「私が学びたかったのはこれじゃないと思った。同時に絶対に医師になりたいという思いが湧き上がってきて、早々に医学部受験に舵を切りました」

 当初は女子大に通いながら仮面浪人をしていたが、夏になっても苦手な数学の成績が伸びず、「こんな中途半端なことをやっていてはだめだ」と女子大を中退。退路を断って半年間死に物狂いで勉強し、1浪で順天堂大学の合格を勝ち取った。

「親には迷惑をかけたけれど、女子大に入学したことは無駄ではなかったと思っています。その経験があったから受験勉強を頑張れたし、医学部の6年間は本当に楽しかった。やりたかった勉強を思いきりできる喜びがありました。医師になってからも、なんとしてもこの仕事を続けようというモチベーションにつながっています」

■子育てと両立しやすい病理医の仕事

 小倉医師が医師免許を取得した当時は今のような初期研修制度はなく、大学卒業後は母校の病理学研究室に入局した。病理を選んだ理由を、小倉医師はこう話す。

「からだの仕組みに関心があったので、一部を専門的に診る科よりもからだ全体を診る診療科に行きたいという思いはずっとありました。医学部6年で結婚していたことも大きかったですね」

 実際に病理医になってみると、当直はなく、勤務時間は比較的規則正しい。術中迅速診断のようなスピードを求められる業務もあるものの、臨床の診療科に比べると仕事の計画は立てやすく、プライベートとの両立はしやすかった。2児の母となるがその間も仕事を続け、学位と専門医資格を取得。キャリアを中断することはなかった。

「周りのスタッフや家族などたくさんの人に助けてもらいましたし、苦労もありましたが、それでも子育てと並行して継続的にスキルを伸ばしてこられたのは、病理医だったからだと思います」

■全身を診るため幅広い知識が必要

 病理検査室には、頭のてっぺんから足の先まで、さまざまな検体が持ち込まれる。

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臨床科の枠を超えた病気に関する幅広い知識が必要