混雑する東京メトロ半蔵門線渋谷駅のホーム
混雑する東京メトロ半蔵門線渋谷駅のホーム

 警備態勢が整った状態で、突然の事件事故などの特殊要因がなければ、あれだけ人が多い渋谷でも、梨泰院のような大惨事にはつながりにくい、ということだろう。

 では、ハロウィーンイベント以外で、群衆事故のリスクがあるのはどんな状況だろうか。

 梨泰院での事故後、SNSでは<満員電車も危険>といった投稿であふれていた。

 たしかに、イベントではなく、より日常での“群衆”といえば、満員電車が思い浮かぶ。

 満員電車で体調不良になったり、ひどいときは骨折など負傷したりする事例は聞く。

 過去の例だと、死亡事故も起きている。1945年に山手線で母親の背中に背負われていた0歳児が満員電車で圧死、47年にも大阪で、砂川発天王寺行きの満員電車で12人が意識不明となり、1人が死亡している。

 満員電車の“危険度”について、大阪工業大の吉村英祐特任教授は、
「一車両にいる全員が死傷するというようなことはないが、局所的に危険な状態になることはある」と指摘する。

 鉄道各社の取り組みや、コロナ禍の影響により、かつてと比べて混雑状況は改善している状況はあるが、事故などの影響で乗客が過度に集中することはある。また、駅の階段付近の車両やドア付近など、人がより密集する場所はある。

 吉村特任教授によると、すし詰め状態の車両でも1平方メートルあたり13人程度の混み具合だと見る。そのとき、1人当たりにかかる圧力は50キロ程度だ。しかし、カーブなどでは、ドア付近では一時的にかなりの圧力がかかることもある。吉村特任教授はこう説明する。

「最大で5~10人程度に1人当たり120キロ程度の圧力がかかっている可能性があります。これは呼吸ができなくなるほどの力で、この状態が長時間続けば気を失うこともあり得ます。背が低い女性や子ども、体の弱いお年寄りは命を落とすリスクも出てきます。また、ドアが開き、降りる際に転倒でもすれば、群集雪崩のような現象が発生するリスクもあります」

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