続けて、決勝戦の前日に発生した中国大陸と朝鮮半島の間にある黄海での南北朝鮮の銃撃戦について、「お気持ちをお察しします」と、お悔やみを述べた。

 このやり取りを宮内庁が公表したことについて、疑問を投げかける記者もいた。

 安全保障上の危機に忙殺される中で来日した金大統領に対して、陛下が個人の見解としてお悔やみを伝えるのは、人として当然だろう。しかし、軍事衝突だとしても両国それぞれの立場がある。一方の国に対してかけたお悔やみを宮内庁が公式に公表するのは、いかがなものかという意見だった。

佳子さま白い装いの真意

 今回のウクライナの選手への声かけについても、機微に触れる部分がある。

 前出の皇室をよく知る人物は、こう話す。

「象徴天皇とそれに準ずる皇族の立場として見た場合、『大変な中でしょうが、頑張ってください』といった直接的な表現は難しいのだと思います」

 しかし、冒頭の会見でのやり取りのように、ウクライナの選手は、「日本に来てどうですか」と佳子さまが口にしたさり気ないあいさつについて「『大丈夫ですか』というお気遣いだと理解している」と解釈している。行間を読み、佳子さまの意図をきちんと汲み取っているということだ。

 この日、佳子さまは、花のような植物模様の刺繍が施されたアイボリーのワンピース・スーツで会場に訪れた。花と葉をイメージしたような白い刺繍の装いは、初夏に咲かせるセイヨウカンボクの白い花を思わせた。セイヨウカンボクは、ウクライナとロシアの人びとの生活に根付いた文化的にも重要な樹木だ。

 佳子さまはここ最近の公務を増やし、皇嗣家の内親王として存在感を増している。口には出さずともにじむメッセージを、ウクライナの選手は受け取ったのかもしれない。(AERA dot.編集部・永井貴子)