車内で女児が意識不明の状態で見つかった駐車場(大阪・岸和田市)
車内で女児が意識不明の状態で見つかった駐車場(大阪・岸和田市)
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 大阪・岸和田市で2歳の女児が車内に9時間放置され、熱中症で命を落とす事故が今月12日に起きた。今年5月にも、新潟市で1歳5カ月の男児が高温になった車内に取り残されて亡くなる事故があったばかり。痛ましい子どもの置き去り事故が繰り返されている。なぜ、大切なわが子を忘れ、車内に置き去りにしてしまうのか。人間の記憶というメカニズムから考えられる理由と対策について、社会心理学専門の碓井真史さん(新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授)に聞いた。

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■「自分は絶対にやらない」は危険

「大切なわが子を忘れるなんて、起こるわけがない」「自分だったら絶対にやらない」。この感覚が実は危険です。人間は意図せずとも間違いを起こすという「ヒューマンエラー」の考え方に立つ必要があります。

 会議をすっぽかしてしまったり、荷物を置き忘れてきてしまったりと、うっかりミスでヒヤッとしたという経験は、たいていの人があるはずです。それが大事にならずに済んでいるだけです。厄介なことに、人間の記憶のメカニズムは、ことの重要度を明確に区別しません。大切なことだから忘れない、ミスをしない、ということはないのです。もしそれが区別できるのであれば、飛行機事故や医療事故など、とくに命に関わる現場でのミスは起きないはずです。わが子の命に関わるミスも、日常的なちょっとしたミスと同じように起こりうるのです。

■日常的行動のスイッチに要注意

いつもと違う行動をするときは、より注意が必要です。今回の岸和田市の事故もそうですが、いつもは保育園への送りをしていない父親が子どもを送ろうとした際に事故が起きている事例があります。子どもを連れて車に乗せるところまでは、いつもと違う行動なので注意を払っています。ところが、運転席に座り、扉をしめてエンジンをかけ始めると、いつもの行動に切り替わります。慣れたルートを深く考えずに運転し、これからの仕事のことをあれこれと考え、いつものように駐車場に止めるうちに、後ろの席に子どもがいる記憶がふーっとなくなってしまう、ということがあるのです。

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記憶は不確か