脳転移に対する放射線治療(定位照射)
脳転移に対する放射線治療(定位照射)

「全脳照射と定位照射では生存率が変わらないことが明らかになっています。定位照射は治療が楽で、髪も抜けない、長生きできたときに認知機能が低下しにくいなど、メリットが大きい。ただし転移数が多く目に見えない転移がある可能性が高い場合など全脳照射が必要な場合もあるので、適切に使い分けることが重要です」(溝脇医師)

 放射線治療は、「止血」も得意だ。膀胱がんや前立腺がん、子宮がん、胃がんなどが進行すると、がんから出血することがある。放射線でがんを縮小することで出血が止まり、輸血が不要になることも少なくない。

 大きくなったがんが臓器を圧迫し症状を起こしているときも、同様に放射線でがんを小さくすることで症状が改善する。

「外部からの照射だけでなく、放射性同位元素(RI)を経口または静脈内投与し、骨転移の病巣へ直接放射線を当てる『RI内用療法』も普及しつつあります」(同)

 進行がんの患者は心身の症状だけでなく、死に至る運命のつらさや今後の生活の心配など、さまざまな苦痛を抱える。前出の井上医師はこう話す。

「各分野の専門家もいますし、医療だけでなく、生活を支える福祉制度なども以前に比べると充実しています。なにがつらいのかを医師や看護師にぜひ伝えてください」

(文・谷わこ)

※週刊朝日2022年12月2日号より

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