■強度の人も安心な眼内コンタクトレンズ
一方、マイナス6D以上の人もできる視力回復手術として、注目されているのが眼内コンタクトレンズ(ICL)だ。黒目の表面にある角膜に小さな穴を開け、ソフトコンタクトレンズに似たやわらかい素材のレンズを虹彩(角膜と水晶体の間の薄い膜)の下に埋め込む。一度入れたら洗浄や交換の必要はないが、不具合などがあれば手術で取り出すこともできる。
ICLは2010年に厚生労働省に認可されたが、当初は白内障や眼圧上昇といった術後合併症が問題となっていた。しかし、現在使用されている新しいレンズにより、合併症が大幅に減少している。レンズの開発にも携わった北里大学病院眼科・医療衛生学部教授の神谷和孝医師はこう話す。
「現在スタンダードとなっている新しいレンズは、中央に小さな穴が開いているため、目の中の水の流れがよくなり、白内障や眼圧の上昇を予防できるようになりました」
ICLが推奨されている年代は、21~45歳だ。40代になると目の調節力が衰え、老眼を発症しやすくなり、さらに50代以降になると白内障も起きやすくなる。
ICLはレーシックと同様自費診療となるため、手術費用は片目で30万~50万円程度、両目で60万~100万円程度かかる。
なお、ICLのような視力回復手術によって、眼軸長が短くなるわけではないので、近視による合併症のリスクもなくならない。メガネやコンタクトレンズなしに見えるようになっても、合併症対策には気を付けたい。
(文・中寺暁子)
※週刊朝日2022年12月16日号より