■中等度の近視でも合併症は起こる
近視であっても、メガネやコンタクトレンズで視力を調整できれば問題はない。しかし、近視が強くなると、合併症を起こすリスクが高くなる。
近視が強くなるほど眼球が前後に伸び、網膜が薄くなったり、はがれやすくなったりするほか、視神経が障害されやすくなる。
大野医師は「中等度の人は特に網膜剥離に注意」と話す。網膜剥離は、網膜がはがれて急激に視力低下を起こし、失明することもある病気だ。強度になると、網膜はさまざまな組織と癒着を起こすため、逆にはがれにくくなる。
一方、強度の人が注意したいのは、黄斑変性や緑内障だ。黄斑変性は、網膜の中心部である「黄斑」が萎縮したり、出血したりする状態だ。緑内障は、視神経に障害が起こり、視野が狭くなっていく病気で、失明原因として最も多い。
こうした近視の合併症は、40代以降で発症しやすくなる。異変に気づいたら、できるだけ早く治療することが大切だ。網膜剥離は進行すると視野が欠けるが、初期は、視界に小さなゴミのようなものが見える「飛蚊症」が表れやすい。黄斑変性は、ものがゆがんで見える、視野の中心が黒く見える、視野が欠けるといった症状がある。
「両目で見ていると気づきにくいので、片目ずつ見え方をチェックしてください。近視の人は月に1回程度、カレンダーなど同じ対象物を見て確認するのがおすすめです」(大野医師)
緑内障の場合は、かなり進行するまで自覚症状はない。
「緑内障は、40歳以上の20人に1人が発症する病気です。症状がなくても40歳を過ぎたら、定期的に検診を受けましょう」(同)
近視の人は、一般的にメガネやコンタクトレンズで視力を矯正するが、「メガネをかけると頭痛がする」「コンタクトをつけるとドライアイがひどくなる」など、不具合を感じる人もいる。そうした場合に役立つのが、「視力回復手術」で、代表的な手術がレーシックだ。しかし、レーシックの場合、近視が強くなるほど、合併症のリスクが高くなる。さらに、強度になるほど近視の戻りも起こしやすくなる。このため、日本眼科学会が作成した「屈折矯正手術のガイドライン(第7版)」では、レーシックの対象を原則マイナス6Dまでとしている。