奥野被告は四つの事件で罪に問われたが、すべて否認して全面的に争った。事実関係だけではなく、
「マスク着用を強制している。それがおかしいし、問題だ。事実無根の事件だが、マスク着用をしないから不当な扱いを受けたり、排除されたりするという問題が根底にある」
とマスクの問題について主張。その後の公判もすべてマスクをせずに出廷した。
大寄裁判長が、
「フェースシールドならどうか」
とマスク以外の着用について尋ねても、
「つけません」
と拒否していた。
検察は論告で、
「我を押し通そうと乱暴、狼藉(ろうぜき)を働くなど極めて悪質。ピーチ航空の事件後には模倣犯が出ている。今後も出ることが危惧される。刑務所で徹底した更生が必要」
と厳しく指摘し、懲役4年を求刑していた。
判決は、おおむね検察側の主張を認め、動機について、
「自分の考えを押し通そうとする思いが強すぎることによるもの」
などとした。
閉廷後、奥野被告は裁判所の外で報道陣に囲まれ、
「私は無罪だ。後付け、こじつけの判決。社会の風潮に流され、裁判官までマスクを絶対視する偏見にとらわれている。マスクをしていないことへの差別だ。マスクの着用の是非について裁判所は判断しなかった。その問題から逃げた」
などと怒りをあらわにして持論を述べ、裁判所批判を繰り返した。判決で認められた暴行罪だが、被害者に対しては、
「謝罪も反省もしません」
と話した奥野被告。今後、弁護士と相談の上、控訴する予定だという。
(AERA dot.編集部 今西憲之)