作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、杉田水脈氏の差別発言批判について。
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今月10日に閉会した臨時国会の終盤、杉田水脈総務政務官の過去の発言に対する批判が繰り広げられた。「あれは差別発言だ」「今は考えは変わったのか」「総理の任命責任がある」など、杉田氏による性被害女性やセクシュアルマイノリティーらへの暴言を、野党議員らがグリグリと追及する様子は、テレビニュースなどでも繰り返し報道された。
私自身、「女性はいくらでもうそをつく」のときは、杉田氏の辞任を求める署名を呼びかけ、13万筆の署名(重かったです)を自民党本部に届けたことがある(受け取ってはもらえなかった)。“そういう人”を、あえて政務官につける岸田文雄首相の判断には衝撃を受けたものだ。
とはいえ、だ。「これ、差別発言でしょ!」と野党議員が声をあららげる様子を見ても、「そうだそうだ!」という熱い気持ちになれない私がいる。杉田氏が「差別の意図はありません」と形式的な答弁をし、それに対し「はぁ?」と、いかにもなあきれ顔をつくる野党議員らの表情にも、どこか空しさやモヤモヤが募ってしまう私がいる。
空しさというのは、一連のやりとりが、Twitter上での140文字以内での書き込み以上のものではなく、クラスの優等生が「杉田さん!これ差別だからね!」「岸田君! 杉田さんをなぜそんなにかばうの!?」程度の幼いやりとりに見えてしまうからだろう。過去の差別発言など国会で議論するほどの問題ではない、というつもりは全くない。ただ、「あなた、差別発言したよね、問題だよね」という場所から、もう一歩踏み出すための議論が展開できなければ、「私は野党、人権がわかっています!」と、結局、差別問題が政治に利用される軽々しさに空しさが募る。
それにも増してモヤモヤするのは、勢いよく繰り広げられる杉田氏批判のなかで、杉田氏のライフワークであり、それこそ彼女の政治家としての核となってきた活動については、野党議員が誰ひとり取り上げなかったことだ。杉田氏がここまで有名になった活動の背景にあるもの、みんなの党、日本維新の会、次世代の党、日本のこころを大切にする党、自民党と渡り歩きながら、杉田氏がぶれることなく一貫して主張してきたことが何かといえば、「慰安婦」問題であり、歴史問題である。