意外なことだが、杉田氏は自著で土井たか子氏への憧れの気持ちを記している。土井さんが日本で一番有名な女性政治家だったころ、公務員時代の杉田氏は西宮で土井さんの演説を聴いている。モノ言う女としての憧れを杉田氏は土井さんに感じたのだ。もしかして社会党が社会党であり続けられたら、社会党の議員になっていたかもしれないという想像をさせるほど、杉田氏は自民党議員になりたかったわけでもなく、深い思想に基づいた政治信条があるわけでもないことがわかる。ただ、この国は、「慰安婦はうそつき」と叫び、最前線で過激に暴れるほど喜ばれ、大物に認められていく社会になってしまったということなのだ。そしてそんな成功体験が、様々なマイノリティーへの暴言を過激に吐き続ける杉田氏をつくっていったのだろう。

「慰安婦」問題へのバックラッシュは、この国の女性の人権問題や、性暴力問題、歴史に対する向き合い方を完全に後退させてしまった。人権を口にする議員であっても、歴史問題や「慰安婦」問題は突っ込まないんだね……とモヤモヤを深めながら、杉田氏の過去の発言を「差別だ」と言い立てる野党議員の顔に高揚感を見てとってしまわないように、注意深くテレビ画面から私は目をそらす。もうこれ以上、諦めたくないという防衛本能なのかもしれない。

 性差別の激しい社会で女が偉くなるためには、多少のむちゃもしなくてはいけないのだろうか。そんな悲しさを、杉田氏はじめ女性議員の姿に感じてしまう。単純に、同世代を生きる、杉田氏と同世代の女として悲しい。そして女の議員が増えなければ、こういう紅一点状態の女は再生産されていく危機感を改めて感じる。それは野党だろうが与党だろうが関係なく。

 で、防衛費増税だ。こういうことを国会が終わる直前に言い出す岸田首相を選んだ自民党そのものを、いよいよ問わなければいけない状況なのだろう。

暮らしとモノ班 for promotion
大谷翔平選手の好感度の高さに企業もメロメロ!どんな企業と契約している?