残念ながら、しもやけのかゆみはどうして起きるのかまだ十分にわかっていません。かゆみというと脳の研究が盛んでしたが、皮膚局所での研究が進んできたのはここ10年くらいのことです。そのため、しもやけのかゆみに関する論文はほとんどありません。

 皮膚の検査では、しもやけが起きた部分を顕微鏡でのぞいてみることがあります。しもやけでは、皮膚の深いところにリンパ球が集まっていることがわかっています。このリンパ球がどういうたんぱくを出しているのかによって、かゆみの原因はかわるでしょう。

 また、皮膚の表面にある表皮細胞がダメージを受けた場合、つまり皮膚に傷ができた場合は表皮細胞から放出されるたんぱくがかゆみを引き起こすこともあります。しかし、じんま疹に重要な肥満細胞がしもやけのかゆみに関係しているとは考えにくく、市販で購入可能なアレルギーの飲み薬はかゆみ止めとして無効と考えます。しもやけがなぜかゆくなるか、ということはまだ十分にわかっていないのです。

 そうなってくると予防が重要になります。寒暖差がしもやけの原因のひとつなので、暖かい屋内から寒い外に出る際には、手袋や耳あてなどで肌を温めるようにしましょう。また、濡れた手袋や靴下をそのまま使用せずに、しっかりと乾燥させることが重要です。手足をカイロなどで温めるのも有効な手段ですが、低温やけどに注意してください。温かい飲み物を飲むことも有効な予防手段のひとつです。

 しもやけで水ぶくれができたり、暖かい季節になっても治らない場合は、皮膚科専門医に診てもらうようにしてください。しもやけはできてしまうとやっかいな病気です。まずはしもやけが起きないように予防をしっかり行いましょう。

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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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