提訴した翌日の2020年11月2日、取材に答えた被害者の女性
提訴した翌日の2020年11月2日、取材に答えた被害者の女性
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 聖路加国際病院(東京都中央区)にチャプレン(牧師)として勤務していた職員の男性から、病院内で性暴力を受けたとして、患者の女性が牧師の男性と、病院を運営する聖路加国際大を相手取り、計1160万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が12月23日にあった。東京地裁は男性が女性にわいせつ行為を強要した点や病院の使用者責任を認め、牧師の男性と病院に計110万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

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 判決によると、女性は難病治療のため、2016年12月から聖路加国際病院に通院していた。男性は患者の精神的なケアをする聖職者の職員(現在は退職)で、女性は複数回、男性のケアを受けていた。

 主な争点は、17年5月8日と22日に、男性が女性に対し、性的マッサージを強要して、自身の陰部を触らせるなどの行為をしたかどうか。

 前回(10月7日)の口頭弁論では、被告の男性と、原告の女性いずれも出廷し、それぞれの主張を法廷で述べていた。

 男性は、17年5月8日のことについて、

「スピリチャルケアが終わった後、女性から『マッサージをしてあげる』と言われ、腕をつかまれて長椅子に座らされ、マッサージを受けました。私は鼠径部(そけいぶ)のリンパのマッサージをお願いしました。ズボンのベルトをゆるめ、鼠径部のあたりまでずらして下ろし、押してもらいました」

 と話し、この約2週間後の22日にも、病院でスピリチャルケアをした後に、マッサージ行為があったと説明する。

「女性はふと立ち上がって私のほうに歩いてきて、上からハグをしてくれました。ものすごくうれしかった。私が立ち上がると、女性が私の首を両腕でより強く抱きしめ直してくれた。本当に恥ずかしいことを言いますけれども、ちょっと両腕を外して、しゃがんで、女性の服をたくし上げ、胸をなめました」

 ただ、「あなたの陰部を原告に触らせたり、あるいは原告の陰部を触ったりしましたか」との質問に対しては、

「いや、絶対にそんなことはしていません」

 と答えた。

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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陰部を触らせたと見るのが相当