(写真/もやい提供)
(写真/もやい提供)

「もともと想定していたのは、仕事をなくして所持金が底をついた方とか、住まいがない方。われわれの活動の対象は、コロナ以前はそういう方が圧倒的に多かった」

 ところが、である。

「最近は、状況がかなり変わってきました」

 大西さんが感じる変化――それは今、食料品を求めに来る人で無職の人は少ない一方、毎日フルタイムで働いている人も普通にいるからだ。

「ところが、賃金水準がとても低く、生活保護基準に近い状況で働いている人が大勢いる。しかも、そういう人が受けられる支援制度って、基本的にないんです」

 食料品配布に訪れる人のほとんどは、非正規労働者と個人事業主だ。

「今、東京都の最低賃金は1072円。その人の状況によりますが、フルタイムで働いても月収は大体18万円台です。そこから税金や社会保険料を引かれると手取りで13万~14万円。生活保護基準は13万円弱なので、それを少し上回っているものの、生活は厳しい。最近、時給は上がってきていますが、物価の上昇スピードのほうが速い」

■がんばっても生活保護基準

 食料品配布に集まった人が最多となった11月の消費者物価指数は上昇率が前年同月比3.7%と、約41年ぶりの上げ幅となった。

「物価の上昇が賃金に反映されるまでタイムラグがある。その間の実質賃金の低下が生活に響いている。今はそういうタイミングにあると思います」

 大西さんの活動を頼りにしている人たちの多くはきちんと働き、収入があるので、生活保護制度は利用できないこともある。しかし、生活水準は生活保護を受けている人とそれほど変わらない。

「もしくは、収入は減っているけれど、まだ貯金があるのでなんとか生活を維持できている。ただ、先行きが不安なので、少しでも貯金を減らしたくない。そんなふうに思っている人がたくさんいらっしゃいます」

 合理的に考えれば、非正規雇用の仕事を辞めて、給付金つきの職業訓練と、家賃補助を受けながら正社員を目指す、という解決方法もあるかもしれない。

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