だが、レース開始早々、“本命”東海大が1、2区とも二桁順位と出遅れる。3区でスーパールーキー・佐藤悠基が区間新を記録し、4区終了時点で4位まで盛り返したが、頼みの5区・伊達秀晃も3日前に発熱した影響から区間18位に終わり、往路を8位でゴールした時点で優勝は絶望的になった。日大も2区でディラング・サイモンが腹痛から区間19位に沈むアクシデントで往路5位と苦しくなり、5人中4人が二桁順位の14位・日体大は圏外に消えた。
この結果、V争いは、“山の神”今井正人の5人抜きの激走で往路を制した順大を2位・駒大が30秒差、3位・中大が1分19秒差で追う展開となった。
だが、復路も往路以上に波乱の連続だった。トップ・順大は、8区で難波祐樹が脱水症状を起こし、4位に転落。7区で2位に浮上した中大も8区から悪夢の3連続ブレーキで圏外へ。両チームを追い落し、8区でトップに立ち、5連覇目前だった駒大も、9、10区で伸び悩み、5位に沈んだ。
そして、上位チームが次々に脱落する間に、ノーマークだった往路6位の亜細亜大が、傑出した選手は不在ながら、全員が堅実な走りでタスキをつなぎ、復路史上最大の逆転劇で、出場29度目での初Vを実現した。
野球のスーパー打撃戦にもたとえられた大乱戦。亜大の快挙は、優勝候補といえどもけっして安泰ではなく、展開しだいでは、どのチームにも優勝のチャンスがあることを証明した。
トップクラスの戦力を誇る常勝チームでも、精神的支柱を失うと、歯車がかみ合わなくなることを痛感させられたのが、21年の第97回大会だ。
前年の覇者・青学大は同年も駒大と2強を形成していたが、前年2区を走った岸本大紀の故障欠場に続き、9区区間賞の神林勇太主将も本番前日に疲労骨折が判明し、予定していた3区を走ることができなくなった。
「神林の分まで」とメンバーが心をひとつにして連覇を目指した青学大は、1区・吉田圭太がトップに18秒差の6位と好位置につけたが、2、3区のいずれも区間14位と失速し、11位まで順位を下げてしまう。