写真はイメージ(GettyImages)
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 事実婚の場合、パートナーとの間に子どもが生まれると、自動的に母親の戸籍に入ることになっている。ゆえに父親と子どもの親子関係を法的に認められるようにするには、認知の手続きをする必要がある。また父親が子どもの親権を持つためには、家庭裁判所で親権を変更する手続きが必要だ。

「そうした一連のことが、子どもに何か不利益をもたらせないかということが心配。日本では、事実婚という結婚のあり方が、社会的にまだまだ認められていない。事実婚と同棲をごっちゃにして、偏見を持っている人は少なくないですから」(智子さん)

 事実婚を貫くことに対し、将来的な不安も大きい。例えば、事実婚は、法律婚と比べて税制上で優遇されないのがデメリットの一つだ。所得税では、配偶者控除や医療費控除が認められず、相続税や贈与税においても配偶者税額軽減が適用されないため、税額が増えることになる。

 また事実婚は、パートナーの遺産の相続人としても法的に認められておらず、たとえ一緒にいた時間が長くとも、パートナー名義の預貯金や不動産などの相続権がない。遺言書を残すことで相続が可能になるが、前述のように法律婚より高い相続税がかかる。

「法律とか権利とか、いつまで社会的な保護や支援が必要ない婚姻の関係性でいられるか分からない。事実婚をしている人は、あくまで“自称・事実婚”でしかなく、せいぜい住民票に“夫・妻(未届)”と記載できるぐらい。自分たちで、“これは結婚関係なんだ”と言い張るしかないんです。この先、何かがあったときのことや老いていく過程を考えると、事実婚を貫き通すのは難しいと思うこともあります」(智子さん)

 取材の中で、智子さんは何度も「法律婚で夫婦別姓が選べるようにさえなってくれたら、本当の意味で納得した結婚ができる」とつぶやいた。

 実際に、別姓を望むなどの理由で、事実婚を余儀なくされている夫婦が一定数いる。事実婚に関するデータは極めて少ないが、内閣府で昨年度に実施した意識調査によれば、事実婚を選択している人は、成人人口の2~3%を占めていることが推察される。

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同姓も別姓も「選択的」なのになぜ実現しない