子どものころ、遊んだ記憶がある人も多い「百人一首」。電子世代の現代っ子にも、宿題が出たり、冬期の学校行事でかるた大会を経験したりと、百人一首に親しむ機会が持たれている。興味を持って諳んじる一方で、覚えるのに苦労した、聞きなれない言葉を覚えて意味があるの?など、正直なとまどいの声も聞こえてくる。教育関係者に、百人一首に触れる良さや楽しみ方を聞いてみた。
【写真】全国300万人以上の児童たちが取り組んだ経験がある「五色百人一首」
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「百人一首遊びは、五・七・五・七・七という伝統的な和歌のリズムや言葉の美しさといった日本の古典文化を自然に感じ取ることができます。札を取りたいから覚えようと、繰り返し唱えることでその調べが体にしみ込んでいくのです。1000年の歴史を繋ぐ、とても壮大な遊びといえます」
そう話すのは、五色百人一首協会理事の渡辺喜男さん。五色百人一首を通して、子どもたちに和歌という日本文化を伝えてきた。
五色百人一首とは、もっと手軽に百人一首の世界を楽しめないかと、1980年代に小学校教師だった向山洋一氏(教育者、日本教育技術学会 名誉顧問)が教材化し広めたものだ。100首を青・桃・黄・緑・橙の5色の札のグループに分け、色ごとに1ゲーム 20首で楽しめる。
五色百人一首は、100首一気にではなく段階的にチャレンジでき、青を覚えたら桃へと達成感を得ながら次に進める良さがある。さらに覚えやすい仕掛けとして、取り札の裏側には上の句が印字されている。忘れてしまった場合でも、札をひっくり返せばすぐに、上の句と下の句のセットを確認できるというわけだ。1ゲーム3分ほどで決着がつくため、学校でも朝時間を活用するなどして、無理なく継続して取り組めるという。
同協会はおもに学校教師が所属し、活用法を教えたり、都道府県ごとのチャンピオンを決める地方大会のサポートをしたりして、その魅力を伝えている。今では全国の学校に広まり、のべ300万人以上の児童たちが五色百人一首に取り組んだ経験があるという。