競技かるたを通じて成長する高校生たちを描いた青春群像マンガ『ちはやふる』。主人公の綾瀬千早、幼なじみの真島太一、綿谷新の3人の魅力はもちろんですが、登場する仲間やライバルも個性派ぞろいです。新作『ちはやふる plus きみがため』では難しい家庭環境の子も登場します。作者の末次由紀さんが、現代を生きる子どもたちに伝えたい思いを聞きました。※前編<「子育てもマンガも震えるほどめんどうくさい。でもそれに負けない!」 『ちはやふる』作者で4児の母・末次由紀に聞く>から続く
【マンガ】『ちはやふる plus きみがため』(c)末次由紀の試し読みはこちら(全64枚)人間関係が不器用な子たちの「根っこの感情」を描く
――『ちはやふる』の登場人物は、どの子も個性豊かで魅力的です。なかには団体行動が苦手な子、コミュニケーション力が弱い子もいますね。そういう子を登場させた理由は?
私自身、特性のある子が好きなんです。個性があって魅力があり、描いていて楽しいですし、物語をおもしろくしてくれます。
それに、競技かるたは個人競技なので、コミュニケーションが苦手でもできる競技です。バスケやサッカーなどの集団スポーツにとけこめない子でも、1対1のかるたなら強くなれます。でも、そこに仲間がいて、隣の子に声をかけてもらえるともっと楽しくなるし、力が出せる。人とつながっていける。そういう成長を描きたいと思いました。
――さまざまな特性を持った子も、だんだん周囲に理解されていく過程がありますよね。登場人物への愛情を感じます。
人間って誰しも、いい子ちゃんばかりではありません。いい子のふりをしていても、本当は違うんだってこともマンガなら描けるんです。
逆に、意地悪する子だって意地悪なだけではありません。その子の本当の気持ちのそばに近づいてみると、自分を尊重してほしい、愛してほしい、わかってほしいという根っこの感情があるんですね。
そこまで描くと、どんなキャラクターでも読者に愛してもらえると信じて描いています。
そしてそれは、現実世界でも言えることですよね。苦手な子でも、その感情に一歩踏み込んでいくうちに、「そういう気持ち、私にもある」と気づくんです。愛情や友情はそこから芽生えていくのだと思います。
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