■損傷している部位によって選択される手術が決まる
手術方法には「関節鏡視下手術」「高位脛骨骨切り術」「人工膝関節置換術」があります。関節鏡視下手術と骨切り術は自分の骨を温存できる治療法ですが、いずれも変形が軽度で関節の機能の大部分が残っている人が対象となります。
熊本機能病院整形外科部長・人工関節センター長・臨床研究室長の高橋知幹医師はこう話します。
「関節鏡視下手術はひざの2~3カ所を1センチ弱ほど切開し、傷んだ部分だけを取り除きます。からだに負担の少ない手術ですが、痛みが半月板や軟骨の損傷に伴う場合にのみ適応できます」
これに対し、骨切り術は脛骨や大腿骨の一部を切ることでひざの重心位置を外側に変え、痛みを改善する治療です。O脚の人は内側に体重がかかりやすく、荷重がかかる内側の軟骨がすり減って痛みが生じます。関節を温存でき、術後に運動制限もなく正座もスポーツもできるため、おもに50~60代前半ぐらいの若く活動度の高い人向けの手術です。
「近年は骨を固定する金属のプレートの改良などによって治療期間が1カ月ほどに短縮して以前よりも社会復帰も早まり、治療の選択肢として再び見直されています」(高橋医師)
■損傷が少ない場合は、より違和感の少ない手術を選択できる
人工膝関節置換術には、傷んだ膝関節を全て人工関節と入れ替える「人工膝関節全置換術(TKA)」と、部分的に入れ替える「人工膝関節単顆置換術(UKA)」があります。関節の変形が進み、痛みが強い場合にはおもにTKAが選択されます。O脚で関節の内側だけが変形し、外側の軟骨には損傷がなく靱帯も正常な場合には、内側だけを人工関節に入れ替えるUKAが実施されることもあります。
TKAは治療成績が良い手術のため広く実施されていますが、人工関節の耐用年数が約20年であることから、おもな対象は60代以降です。関節の変形が強く、痛みが強い場合の最善の治療とされ、リハビリを含めて2週間程度で退院できるケースもあり、社会復帰が早いのも特徴です。
「術後のひざの曲がり具合は、術前の可動域に比例します。TKAを受けた人のうち8%程度の人は正座も可能です」(二木医師)