体重を支える膝関節は、関節の中でもとくに加齢による影響が出やすい部位とされています。ひざの痛みの半数以上を占めるのは「変形性膝関節症」で、日本の変形性膝関節症の潜在患者数は3000万人にのぼるとされています。進行性の病気であるため、痛みを感じはじめたら早めに運動療法などの対策をとることが重要です。本記事は、2023年2月27日発売の『手術数でわかる いい病院2023』で取材した医師の協力のもと作成し、お届けします。
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中高年のひざの痛みのおもな原因となる病気は「偽痛風」「特発性大腿骨内側顆骨壊死」「変形性膝関節症」です。
偽痛風は60歳以上の人に多い、ひざの急性炎症です。肝臓の代謝機能の低下により、ピロリン酸カルシウムが増えて結晶化し、ひざに炎症を引き起こすとされ、痛みや腫れの症状が出ます。特発性大腿骨内側顆骨壊死は膝関節の軟骨の下にある骨が微小骨折を起こして壊死に陥り、ひいては軟骨が変性してしまう病気です。60代以上の高齢女性に多くみられ、とくに夜間に痛みが出やすいのが特徴です。最近では内側半月板の後角損傷が原因といわれています。
ひざの痛みの半数以上を占めるのは変形性膝関節症です。加齢に伴い膝関節にある軟骨や膝関節のクッションの役割を果たす半月板がすり減り、大腿骨と脛骨(すねの骨)がぶつかり合うことで痛みが生じます。肥満や筋力の低下、関節軟骨の代謝異常、O脚やX脚なども影響します。ひざに負担がかかる仕事やスポーツ、外傷が引き金となって発症することもあります。進行すると痛みが強まり、O脚やX脚がさらに進行します。
65歳以降になると筋重量や筋力の低下症状である「サルコペニア」も起こりやすくなります。筋力は関節を安定させる重要な役割があるため、筋力低下に伴ってひざもぐらついて不安定になり、骨同士がぶつかりやすく、変形性膝関節症がより発症しやすくなります。